『第二章』宝塚歌劇団専科(1)

旅行記が終わったところで本題の『第二章』のお話を・・・

ニール・サイモンの戯曲『Chapter Two』。物語は妻に先立たれた男と離婚したばかりの女の『早すぎる結婚』を巡る物語ですが、サイモンも妻ジョーンをがんで亡くした後、女優のマーシャ・メイソンと電撃的な再婚をしていることから自伝的戯曲と言われています。

今回の宝塚での上演はストレート・プレイでの上演。2年前に『おかしな二人』を宝塚で上演した際もストレート・プレイでの上演でしたが、宝塚ではとっても珍しいこと。なんと言っても『歌劇団』ですから基本はミュージカルにするわけですが、このシリーズは科白を聞かせることが目的かのように2時間弱の本編はストレート・プレイで上演されます。

今回の公演は原作通り4名での公演。出演は専科の轟悠さん(1985)と英真なおき(1982)さん、星組の夢咲ねね(2003)さんと早乙女わかば(2008)さん。カッコの中の数字は入団年。ベテランの男役と20年ぐらいキャリヤの違う娘役による上演。しかも、主演娘役が相手役以外とペアを組むというのは久々の出来事なのです。

さて、1回目の観劇は10月10日(木)の11時公演。実は最前列のセンターブロックという好座席。

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 ※宝塚バウホール。客席数526席の中規模ホール。

始まるとすぐに気づく。ニール・サイモンの原作とは少し違う。ストーリーは『Chapter Two』だが細かい部分で違いがある。脚本のベースが30年前の翻訳なので言葉が新しくなっているのは違いと言わないとして、たとえば幕開けのシーンでは主人公のジョージが帰ってくるシーンでは、弟のレオが空港に迎えに行く前に暖房を入れておいた設定になっていたが、原作では暖房のスイッチを捜すところから始まる。印象としては『おかしな二人』の時の方が原作に忠実だった感じがします。

一幕。ジョージ(轟)とレオ(英真)の掛け合いはシンプルな科白の掛け合いで進んでいきます。聞きやすいし状況説明もスッと入ってきます。一方、ジェニファー(夢咲)とフェイ(早乙女)の掛け合いはアメリカ・ドラマの吹き替えのような少しオーバーめなやりとりで始まります。特にジェニファーはアメリカン・コメディーの映画に出てきそうなぐらいの科白回しと仕草でした。でも、観ていくうちに、それで自然に見えてくるから不思議だし、またジョージとジェニファーの会話の場面では一転してしっとりとするものだから、コントラストでより雰囲気の良い場面に見えました。

また、それにしても轟さんは凄い。電話のシーンや5分間テストのシーンなどで見せる男役を崩さない範囲での可愛さは素晴らしいし、対する夢咲さんの5分間テストのシーンのラストの表情の可愛らしさもまた素晴らしく、幸せな第一幕がより鮮やかに描かれていた。

二幕。まずはレオがジェニファーにジョージの妻が無くなったときのことを話す語りの部分。英真さんの語りは素晴らしかった。淡々と始まり、ジョージが鬱ぎ込んでいる様子の描写は弟視点からの心配な気持ちが込められていて思わず泣いてしまった。

そして、圧巻だったのはジョージがカリフォルニアに向かう前のシーンです。心の整理がつかないジョージにジェニファーが捲し立てるシーン。捲し立てているジェニファーはもちろんのこと、轟さんの受けが素晴らしかった。特に『戦ってよ、自分の心と』まで避け方と『私たちの愛は戦う価値があるのよ』の一言への反応。それまで固く閉ざしていた気持ちが少しほぐれて、フッと笑顔になる表情が二人の関係性を何よりも物語っていたように感じました。

科白は言っている方は大変だけれど、言われている方はもっと大変で、科白をどう受けるかで作品の印象が大きく変わります。この長科白の中の2人のやり取りは鮮やかで、このシーンを何度も観たいと思えるほど素晴らしいものでした。

物語が終わった後は宝塚らしく4曲のフィナーレが付いて終演。
やっぱり、観たいと思ったものは足を伸ばしてでも観るべきだと改めて感じた最初の観劇でした。

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