今日はainurさんにお誘い頂いて東京宝塚劇場にお出かけ。『ラスト・タイクーン/TAKARAZUKA ∞ 夢眩』を観てきました。
花組トップスター・蘭寿とむさんの退団公演。今、5組を見渡せば花組が1番見応えのある舞台を作っているのではないかと思います。特に『オーシャンズ11』以降の作品は近年の宝塚でもなかなか観られない魅力を放っています。
まず、芝居は「ミュージカル『ラスト・タイクーン ―ハリウッドの帝王、不滅の愛― 』~F・スコット・フィッツジェラルド作「ラスト・タイクーン」より~」。『グレード・ギャツビー』や『夜はやさし』で知られるフィッツジェラルドの遺作である『ラスト・タイクーン』を原作にしたミュージカル。脚本・演出は生田大和さん。作品の感想としては小説原作の為か小説の粗筋を追っていくようなダイジェスト感が否めず、それぞれのシーンは素晴らしいのだけれど、結末への盛り上がりに欠ける気がしました。
スターとキャサリンの恋愛も、スターとブレーディの対立も、会社と労働者の対立も、良い場面が多いのに盛り上がり切らない。こう考えるとやっぱり恋愛を描くには映画作りの話を振りすぎたし、映画作りを描くには労組の話題に振りすぎたし、1時間半(ミュージカルなので1時間ちょっと)の作品にまとめるなら話題の切り込みが必要だったのかなと。生田さんの作品で以前観た2時間超の『春の雪』は素晴らしかったけれど、感覚的には『この描き方なら2幕でないと書き切れない』という感じでした。
・・・というか、それ以前に『トップスターの退団公演はハッピーエンドにしましょうよ』と思うのは僕だけだろうか。ラストシーンで男役の後ろ姿で終わりたいのは分からなくないが、瀬奈じゅんさんの時のように娘役トップが不在ならともかく、相手役がいるのに一人姿で終わらせるのはいかがかなと。最近、個人的な研究課題である『ピグマリオン』と同様で、『マイ・フェア・レディ』のように物語を大胆に打ち切って、ハッピーエンドを暗示する終わり方も出来ただろうにと思います。
まぁ、どっちが良いかは意見の分かれるところだと思いますが。
シーンとしては監督の更迭からスミスが労組結成を説く場面や脚本家協会でのスターを中心とするダンスシーン、ラスト前のスターとブレーディの対決の場面など良い場面が多く、とても楽しむことができました。花組は集団の力が強いので、どうしてもそういう場面が強く印象に残ります。これは下級生までしっかりと成長している証拠だと思いますし、理想的な組の姿ではないかなと思いました。
ショーは『TAKARAZUKA ∞ 夢眩』。演出は齋藤吉正さん。芝居よりもショーの方が演出家のパターンが出やすいのですが、今回のショーは良くも悪くも斎藤さんらしいショーでした。特に中詰め終わりの5人残しは必ずしも効果的ではないと思います。雪組で観た時は『おぉ~』と思いましたが、使いすぎると魅力は薄れます。
また、オープニング『MUGEN SPIDER』も。明日海さんのこのビジュアルは最強に近いと思いますが、そろそろ違う角度からお願いします。『Studio54』の時は『おぉ~』と思いましたが、『Z-LIVE』で落ち着き、今回は『またか』という感じが否めない。花組で再び出会ったのだから、オープニングから今までのビジュアルの使い回しは・・・と思ってしまいました。
でも、全体としては今の花組の力が存分に発揮された楽しいショーでした。いくつか挙げると、『5th Stage MUSEN LOVER』、望海さんと蘭乃さんの場面。曲が流れた瞬間に『あっ、朝倉大介だ』と思う。後で調べると『Preserved Roses』という曲。最近は全然チェックしていないのですが、やっぱり一時期随分と聞いていた人の曲調というのは分かるものです。赤い衣装で歌う場面でしたが、イメージと曲が良くあっていたと感じました。
『7th Stage 夢眩少女』、明日海さんの場面。ジョーカーに誘われて青年が不思議な世界に導かれるという場面です。パターンとしてはショーでは王道的なものですが、ビジュアルと音楽が良くあっていて、ジーッと見入ってしまう雰囲気がありました。
そして、『Last Stage TAKARAZUKA ∞ 夢眩』。トップスターの退団公演ですから、正統派の黒燕尾となるわけですが、今の花組の力を象徴するかのような一糸乱れぬ黒燕尾は圧巻です。この場面だけ観に来ても価値のある公演だと思います。
終演後、というかショーの途中ぐらいから偏頭痛が・・・ 最近、初見の作品を観ると必ずと言っていいほど偏頭痛が出ます。集中しすぎは禁物と思っているのですが、観ている時に気づくと肩が上がるほど硬直しながら観てるんですよね。だから、偏頭痛が出る。で、こういう時に限って常備薬を持っていない。気をつけないと・・・