今日は『ウィキッド』を観に、電通四季劇場[海]にお出かけ。本当は今年の春に上演した『D Lover』の前に観たいと思っていたのですが、東京で上演していなかったために断念していた演目でした。
『WICKED』はライマン・フランク・ボームの『オズの魔法使い』の世界観を題材に、グレゴリー・マグワイアの書いた同名小説をミュージカル化した作品。端的に表現すると『オズの魔法使い エピソード0』という感じ。ドロシーたちがオズの国に来る以前の西の魔女・エルファバと南の魔女・グリンダが如何にして『悪い魔女』と『良い魔女』になったのかを描いた作品です。
感想はというと、素晴らしかったとしか云いようがない。やっぱり、ミュージカルの持つ力は絶大なものがあります。特にグリンダとエルファバの友情の芽生えあたりからの展開は素晴らしく、オズとの対立から『悪い魔女』というレッテルを貼られたエルファバが歌う『自由を求めて』は歌・照明・装置が一体となって1幕の終わりに向かう、実に感動的な光景だった。
で、休憩中。一緒に観に行った劇団四季ファンが『自由を求めて』で感動して隣で泣いている時に、いつ上演するか分からないけど『D Lover』をもう一度、リライトしてみようと思いました。やっぱり、『オズの魔法使い』はとっても魅力的な物語だし、もっともっと工夫の余地があるはず。
そして、『D Lover』の前に観なくて良かったと思いました。観ていたら、絶対に世界観が引きずられたと思うからです。逆に観とけば良かったというのは照明の使い方。エメラルドの都の照明は緑と白のコントラストを使えば、目に優しく見せられるのかと観ながら凄く反省した。やはり、色々なものを観て学ぶことは大切だと改めて感じました。
そして、2幕はほのぼのとした1幕の展開とは変わり、オズによるプロパガンダが激しさを増し、やがてドロシーがオズの国にやってくる・・・と話が進んでいきますが、ただ1点、無類のハッピーエンド好きとしては終幕の直前の展開が残念でした。
これから観る方もいるかもしれないので、結末を知りたくない方はこの先は読まないでください。
2幕でエルファバはフィエロと結ばれるが、フィエロはエルファバを助けるために捕らえられてしまう。エルファバは拷問の苦痛からフィエロを救うために魔法でかかし人間に変える。その後、エルファバはドロシーに水をかけられ、溶けてしまったかと思われたが、実は溶けたように見せかけ、姿を隠していた。その後、フィエロ(かかし)がエルファバに危機が去ったことを知らせる。エルファバは自分が生きていることをグリンダに伝えるべきかとフィエロに問うが、フィエロはそうしない方が云い、二人で姿を消す。
・・・というのが結末である。物語はきっちりと伏線が張られていて、最後に向けて綺麗に伏線が回収されていたので、かかしがフィエロと分かった瞬間に、僕の頭の中ではバラ色のハッピーエンドが思い浮かんでしまった。
どういうことか。僕が今日、『WICKED』初見であったことを前提にお読みください。
2幕の冒頭で『魔女は水で溶ける』という言葉にフィエロがそんなことがあるはずないと言っていた。確かにこの物語の趣旨からすれば、エルファバは人の子ですから水で溶けるわけが無い。だから、ドロシーを捕らえたエルファバの元にグリンダが訪れ、『逃げて』と言った時に、エルファバが水の入ったバケツを持った時に、グリンダは永遠の別れを感じた訳だが、観てる方からすれば『エルファバは死なない』と思う訳です。
そこから引き幕が閉められ、ドロシーがエルファバに水をかけるシーンのシルエットが映写される。エルファバが溶ける。引き幕が開くとエルファバの帽子が残る。グリンダは友を失い、友の志を継ごうとオズを追放し、真の良い魔女として生きていく決意をする。その傍らで、かかしがエルファバに危機が去ったことを知らせるとエルファバが姿を現す。『やっぱり生きていた』と思う。エルファバがかかしにフィエロと呼びかける(←ここ重要)
この瞬間、僕には前述のエンディングではなく、バラ色なハッピーエンドが浮かんでいた。1幕でエルファバとグリンダがエメラルドの都を初めて訪れた時、街中のものが緑に見えるのだから、緑色の肌のエルファバを奇異の目で見るものはいない。エルファバはここが自分が生きる場所だと喜んでいた。そして、かかしと云えばオズが追放された後、エメラルドの都の王様となるのが『オズの魔法使い』の続編のプロットです。
ならば、『二人はエメラルドの都で仲良く暮らしましたとさ・・・』というハッピーエンドだろう思い、『この後はとエメラルドの都の都のセットに戻って二人の幸せな姿が!』という展開がバーッと思い浮かんだわけです。宝塚病ですね、完全に(反省)
でもですよ! 見事なまでにライマン・フランク・ボームの原作と辻褄が合うように展開していたから、期待するじやないですか。でも、目の前で起こった続きはバッドエンドでは無いけれど、慎ましやかなハッピーエンドでした。現実的と云えば現実的ですが・・・ねぇ(@@)
しかし、『WICKED』の結末に問題があるわけではなく、とても楽しむことができました。
(※この記事はそのうち11月24日22:00に移動します)