『Huis Clos 出口なし』学習院+戯れの会#3★

(この記事はいずれ2017年2月24日 @ 23:00に移動します)

物事にはタイミングというものがあるけれど、今回はお誘いと観に行けるタイミングがバッチリと噛み合いました。そういう時は素直にお出かけするのが吉。ということで予約をして観に行くことに。

今回、青山ねりもの協会の平澤萌花の出演する舞台は『Huis Clos 出口なし』。原作はフランスの哲学者にして劇作家でもあるジャン=ポール・サルトル。今回の上演台本は新訳らしい。学習院大学大学院人文科学研究科身体表象文化学専攻の主催とのこと。学習院大学にこういう研究科があることは正直知りませんでした。

さて、会場は学習院大学の南1号館。とても趣のある外観、内部はかなり手が入れられてたが、建物自体は関東大震災後の 1927年に理科特別教場として建てられ、 国の登録有形文化財でもあるらしい。この建物の3階の教室が会場。スペースとしては広くないが、天井から吊した鉄格子のようなものと白熱球による照明など、密室的な雰囲気が醸し出されていました。

公演の看板。目白駅からすぐの西口から南1号館まで案内が出ていました。
南1号館。外見から趣のある建物です。

サルトルと言えば『実存は本質に先立つ』という言葉に象徴されるように『実存主義』に立つ哲学者です。あまり哲学には明るくないので、踏み込んで間違うのもイヤなのですが、そういう芝居だったので少しだけ触れておくと、サルトルの考え方は人間について『神様によって本質が先に決められていて、人間という実存が作られる』のではなく『人間という実存が先にあって、本質を自ら選択し、創造していかなければならない』というようなことです。

・・・が、自ら創造しなければならない本質なのだけれど、実際には常に状況に拘束され、他者からどう見られるかによって固定化されてしまうと問題があるわけです。本来は自分で自分の本質を創造しなければならないのに、他者からどう見えているのかが大きな影響を与えてしまう。それをサルトルは『地獄』と言うわけです。この『地獄』の有り様を描いたのがこの『出口なし』という作品です。

物語の舞台は地獄のある一部屋。そこに連れられてきた1人の男と2人の女が連れてこられる。相部屋となった3人は当然ながらお互いに干渉しあい、それぞれに強みと弱みのある三竦みの状態となって永遠の地獄を過ごしていくことになる最初の一騒動の様子を描いた作品。

僕の中で『フランスの演劇』というと登場人物たちが考えていることを全部口に出してしまうような科白があふれ出してくるイメージがありますが、この作品は正にそういう作品で、とにかく登場人物たちがよく喋る。しかも1人で長々と喋る、喋る、喋る。『出口なし』はサルトルの戯曲の中では比較的、ライトな作品だと聞くけれど普段、哲学に触れることのない人間でも、科白が綺麗に耳に入ってくるので途中で話が分からなくなることもなく、物語の展開も聞いていて実に楽しかった。

特に中盤から、お互いがお互いにとっての地獄であることを十分に理解したところから始まるやり取りは実に軽快で面白い。自らが背負う業と他者から押し寄せてくる地獄との葛藤。それが実に喜劇的に描かれている。誰も笑わないのでガマンしていたけれど、後半は笑いを堪えるのに必死、特に最後の科白の前の間は大変でした。

作品自体は古典と言うほど古い作品ではないけれど、翻訳がとても良いのか長科白にも関わらず科白のやり取りがとても軽やかで、間も絶妙。サルトルの戯曲に真っ正面から取り組んで、これほど軽快な作品に仕上げられるのは役者の実力も勿論のこと、スタッフの力も相当なものだろうなぁと感心しきり。その中で平澤も三竦みの一角として科白の応酬に見事に応えていました。今回はエステルという役を演じていましたが、あの裏表のギャップをしっかりと見せつつ演じる実力はさすが。表現の幅は勿論のこと、あのキャラクターをやはり得がたいものがあるように感じました。

また、この公演とは関係ないけれど、ウチの『Love & Chance!』の原作である『愛と偶然の戯れ』も本当はこのぐらいの長科白の応酬の作品なんだよなぁ・・・と思ったりもしました。フランスの戯曲を研究している人がマリヴォーだと思って観に来たら、きっと激怒するに違いないと分かってはいましたが、久しぶりにフランスの演劇を観てみて、改めてその思いが強くなりました。

ヤバい(+_+) でも、まぁ、今更ジタバタしても仕方がない(。・ω・。)

終演後、ご挨拶に行くところで青山ねりもの協会のもう1人の主宰である金谷と合流。昨年は青山ねりもの協会の公演がなかったので金谷・平澤両主宰に直接会ったのは随分と久しぶり。この2人に会うと、また頑張らねばという気を新たにします。今年は間違いなく忙しいので頑張っていきたいと思います。

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