コピスみよし高校演劇フェスティバルで交流のある東京農業大学第三高等学校の自主公演。『東北復興支援チャリティー公演』と銘打って、二年連続で中央発表会に出演した演目を同時上演するということで、フレサよしみまでお出かけして来ました。
実は農三さんには色々なご縁があります。まず、僕が初めて中央発表会に出た時(夏芙蓉)、農三さんも中央発表会に出演(Ga→mu☆)されていました。コピスで初めて演出作品を上演(蝶になる家族)を上演した時に農三さんが初出演(『TeLeScOpE』)。そして、なにより顧問のりゅうさんは高校の大先輩。そんなことが色々とあり、人見知りの激しい僕が勝手に親しみを感じている演劇部の上位にランクインしているのであります。
昨年暮れの関東試演会にも3日に分かれて皆さん観劇に来てくださり、その際にこの公演のご案内を頂きました。実際にはこの案内を頂いた時に部員を連れて観に行こうと決めていたわけですが、チケット予約の連絡をしたのは関東を終えての年明け。電話した際も驚かれたようだったけれど、コピス新年会でチケットを受け取った際に僕も行くことを伝えると、もっと驚かれた(^_^;) まぁ、高校演劇を観ないでお馴染みの僕なので、当然の反応かと思います(-_-;)
さて、演目は共に畑澤聖悟さんの『もしイタ 〜もし高校演劇のマネージャーが、青森のイタコを呼んだら〜』と『翔べ!原子力ロボ むつ』。『もしイタ』は昨年度、『ロボむつ』は本年度、中央発表会に推薦された作品で共に僕の周りではとても評判の良い作品です。しかしながら、『もしイタ』の中央発表会は観に行っていませんし、コピスは上演順が直前だったのでちゃんと観れず、『ロボむつ』も稽古場の割り当ての関係でちゃんとは観られず。なので、両方とも1時間ちゃんと観るのは初めてでした。
観てみて思ったことは、色々な方が言われていたことが、それぞれに理解できるような気がしたと言うことでした。
まずは率直に『こんな大変な作品を良く選んだなぁ』と思いました。両方に共通して、舞台装置はほぼ無く、『もしイタ』にはそもそも照明も音響もない。そういった意味では役者勝負の作品である潔さのある作品です。果たして、こういう作品を上演できる演劇部が県内にどれほどあるだろうかと考えます。部活としてきちんと活動して部員数を確保する必要があるでしょうし(ウチはここで脱落します(+_+))、あれだけの運動量をこなすためには体力も必要ですし、あのフォーメーションや群唱を成立させるためにはチームワークだって必要になるでしょう。これは容易なことではありませんが、農三さんはこれに果敢に挑み、見事に作品として成立をさせていました。この作品が多くの人々の心を動かしたことがそれを証明しているし、これは素晴らしい成果なのだろうと思います。
しかし、その一方でこの作品は完成に近づけば近づくほど、恐らく1つの方向性に集約されていく作品なのだろうと感じました。この2年、中央発表会の際に話題になった『コピー論争』のそれです。『もしイタ』や『ロボむつ』はいわゆる『高校演劇』の文法からはみ出した作品ですから、同じ畑澤さんの作品でも『修学旅行』や『生徒総会』などとは違って、自由度が極端に低く、この作品を上演するためには『ある型』を習得する必要があるのだと思います。そして、その型を練度や習得度が高ければ高いほど、オリジナルに近づいていくのが自然で、逆を言えばそれが上演のクオリティーの高さを表すことになるのだと思います。農三さんの上演についてそういった議論が巻き起こったのは、オリジナルと比較されてしまうぐらい良く出来ていた背景があるように感じられました。
僕自身はこの作品のオリジナルを観たことはありませんので、その比較は出来ませんが、仮に相当に似ていたとしても、別に何の問題もないと思います。多くの芸事はまず完全に様式を受け継ぐことから始まり、それを踏まえて、それぞれの個性を彩っていくもののように思いますし、様式の習得というのは上達への必要なステップだと考えるからです。(まぁ、コンクールという側面がそういったことを許容し辛くするのかもしれませんが・・・) ですから、逆に『農三さんの次の作品』に興味を持つ方がいるのはとても理解できます。『農三さんは1つの様式を身につけた。だから、早く次のステップに進んで欲しい』という声にもそのうち応えて欲しいなと思っています。
・・・などと本題とは関係ないことをつらつらと書いてしまいましたが。改めて個人的な感想を少しだけ。
どちらの作品もとても元気よく、思い切りよく演じられていて清々しい印象を受けました。何より、きちんと観ている方に物語を届けようという意識が感じられ、舞台の中で収束してしまいがちな、いわゆる『高校演劇』とは明らかに一線を画す作品に仕上がっていました。そして、それは農三さんがこの作品を上演する意義として考えてきた『被災地に思いを馳せてもらう』ためには必要なことだと思います。そして、何より2本同時上演に農三さんの心意気が感じられました。興味深いところはたくさんありましたが、それぞれ特に印象に残ったところを1つずつ。
『ロボむつ』。本来相当に難しいは中央発表会の時に事務局楽屋でリハを観ていた時から、サツキとミナヅキの元気がなくなる場面が気になっていました。今回、全編を通して観てみてもやっぱりその場面が印象に強く残りました。たぶん、愛すべきキャラクターとして、でも実際は『むつ』と紙一重の存在でもあるキャラクターとして造形されているサツキ・ミナヅキと主人公との交流を通じて流れゆく時の長さ、その別れによって絶望的な時の長さに気づかされるのだと思います。これは本来はロボットという無機的な存在のキャラクターを魅力的に造形できていたからこそだと思います。
『もしイタ』。取り組んでいる時間が長いからか、設定が実際に近いからか、こちらの作品の方が良く馴染んでいるように感じられました。こちらの作品はそれぞれの役者が一つ一つの役をとても魅力的に造形していました。舞台上に登場する者を全て役者が表現するという難易度の高い作品ですが、それぞれのキャラクターや生き物、物体にいたるまで、しっかりと考えられた上で演じられているのだなと感じられました。この役者一人ひとりが伸びやかに表現している姿が、農三さんの魅力なのだろうなと思いました。
しかしながら、その反面で声は聞き取りづらかったのは残念でした。特に役者が後ろを向いたり、横を向いたりするところの声は聞こえませんでした。なので、多くを説明する『ロボむつ』は少し辛かったように思います。また、演出観で反対側に経つ僕から見ると、プリンシパルとアンサンブルのお芝居のバランスが悪いように感じました。これは多分、演出の持つ優しさであって、それが魅力だということで片づけることもできるのですが、気になる人もいるだろうなぁと思います。
・・・とはいえ、同じ発表会で上演する時はなかなか落ち着いてみることもできないので、久しぶりに農三さんのお芝居をゆっくり観ることができました。今度は6月のコピスでの公演を楽しみにしています。
ご来場ありがとうございました。また、丁寧なコメント、嬉しく思います。先生のおっしゃる通り、完成度が上がると、どうしても似てしまい、ジレンマを感じておりましたが、それがいいと言って下さる方がいらっしゃることが救いです。今回企画は、生徒から上がったもので、まさか、有料自主公演を自分たちでするなんて考えてもいませんでした。外回り(受付や案内、チケット販売、移動手段、等)を快くOB・OGが引き受けてくれたからこそ実現できました。300人を超えるお客様に背中を押された感じもありがたかったです。3月の自主公演、楽しみにしております。お手伝いできることがあれば、おっしゃって下さいませ。
コメントありがとうございます。
農三さんの舞台はお客さんを楽しませたいという気概に溢れていたように思います。
そして、結局なによりそれが大切なのだと思います。
これからも一緒に頑張っていきましょう!!!