(この記事はいずれ2016年3月19日 @ 20:00に移動します)
ロバート・ルイス・スティーヴンソンの小説『ジキル博士とハイド氏の奇妙な事件』を原作にしたミュージカル『ジキル&ハイド』。脚本・作詩はレスリー・ブリカッス、音楽はフランク・ワイルドホーン。これがワイルドホーンのデビュー作だというから才能のある人というのは最初から光り輝いているということだろう。
この作品の初演は1990年、日本初演は2001年11月。鹿賀丈史さんの主演で日生劇場で上演されました。僕がこの作品を最初に観たのは2003年の再演時。この時のキャストでCDが出ているのでこの印象が強い。とにかく音楽の力強さと演出の鮮やかさが印象的で2005年、2007年の再演も観に行きました。
2012年の5演からは主演が石丸幹二さん、ルーシーに濵田めぐみさん、エマに笹本玲奈さんとなりましたが、この時は見に行けず、今回の6演が新キャスト初見となりました。個人的にはあまり人がバタバタ死ぬ話は好きじゃないのですが(ハッピーエンドでもないし・・・)、それを乗り越えても観てみたいというのは作品の魅力だと思います。
さて、今日の公演の話。印象としては『ザ・ミュージカル』。真ん中の3人は勿論のこと、ジキル博士の友人ジョンが石川禅さん、エマの父・ダンヴァースが今井清隆さんとキャストに隙がない。特に今井バルジャン好きだった僕としては、今井さんのダンヴァースはとても魅力的な配役でした。
しかし、今回はなにより石川禅さんのジョン・アンダーソンが良かった。3演の時に石川さんのジョンを観ているはずなのだけれど、今回はとても印象的でした。舞台上で激しい感情のやり取りが繰り広げられる中、ジョンだけは誰よりも穏やかに受け答えをされていて、逆に印象に残る感じでした。そして、物語後半にジキルが自らの身体を使って実験をしていることを知り、ルーシーに手紙を届けることを頼まれた後、部屋を出ていく際に『ヘンリーに、神の助けを!』と叫ぶ場面が、それまでがとても穏やかだった分、印象に残りました。なんというか、ジキルが破滅へと向かっていくのを止めることができない歯がゆさや無力さが凝縮されているように感じられたのです。
演出も随分と変更されていたし、照明の鮮やかさも際立っていました。やっぱり、ブロードウェイ・ミュージカルは良いなぁとつくづく感じる観劇でした。