どうも配役や作品の構成のことばかりの話になってしまったので、少し肩の力を抜いた感想も書いておこうと思います。
まずは何をさておいても愛希れいかさんのマリー・アントワネット。成長著しい娘役トップさんですが、今回の歌も素晴らしい。ルーレットを模した派手な衣装にも負けず、非常にクリアな歌声を響かせていました。年齢の設定の付け方にも無理が無く、貫禄のある王妃に仕上がっていたと感じました。今回はダンスのシーンがほとんど無かったのが残念でしたが、これだけ不遇の中でしっかりと成長を続けるのは素晴らしいことだと観るたびに感じます。『もっと活躍の場を!』と思うのは僕だけではないと思います。
次いで暁千星さん。『THE MERRY WIDOW』以来、注目しているし、人間関係上も応援せざるを得ない暁さん。今回はフェルゼン伯爵という娘役トップの恋のお相手。正直、驚きました。最初のアントワネットとのデュエット、五分とは云わないまでも十分に相手が務められているではありませんか。やっぱり、上手な上級生を向こうに回すというのは必要な経験なんだろうと思いますし、ひょっとするとこの奇妙な配役の恩恵を一番受けたのは暁さんだったのかもしれません。フィナーレの男役の群舞でのダンスソロもさすがの安定感でした。
次いで凪七瑠海さん、珠城りょうさん、沙央くらまさんの革命家を演じた方々。この3人のキャラクターが実に色分け良く立ち上がっていました。この3人が真ん中に立つと革命感が盛り上がってきていました。凪七さんのバレロワイヤルの演説のシーンも良かったし、珠城さんの2幕冒頭のシーンも良かった。沙央さんの軽妙な演技が緊張感の緩和に一役買っていたし、この3人の組み合わせはとても良かったと思います。
次いで紫門ゆりあさんが演じたラマール。こちらは家に帰って感想が言えないと大変なことになるので、出てくる度にしっかりと観察(–;) コメディーリリーフとしての役割をしっかりと果たしながら、細かい芝居を沢山挟み込み、役柄をしっかりと膨らませていたように感じました。本来なら、全体的な雰囲気が最行き詰まるような展開だと、もっと重要な役割になっただろうにと少し残念でした。
最後に宇月颯さん。この数年ずっとだけれど、もっと活躍する姿が見たいと切に願います。舞台に登場すると、やっぱり目を引く存在でありますし、今回のフィナーレの男役群舞の始まりで階段に座っている姿も実に男役らしい格好良さがあります。男役らしすぎるのが、今の可愛い月組では浮いてしまうのかなぁとそれも残念な気がしました。
さて、今回の作品はフランス革命の始まりである1789年を中心に描かれています。個人的にはフランス革命で脚本を書くなら、やはりこの年にスポットを当て、主人公はカミーユ・デムーランとリュシル・デムーランが中心になるんだろうなぁと思っています。まぁ、部員が50人ぐらいいないと無理なので書くことはないと思いますが。
その意味でも個人的にはこの作品のアプローチはとても面白いと思いました。でも、さすがにロナンは主人公としては弱い。一市民を主人公に選ぶなら、カミーユ・デムーラン、マクシミリアン・ロベスピエール、ジョルジュ・ジャック・ダントンという超有名人の近くにおくのは無理があったのではないかなぁと漠然と感じました。やはり、名を残す人というのは魅力的な人物であることが多く、役柄の造形としても魅力的に仕上がっていて見せ場もあるのに対して、ロナンには見せ場が作りづらいし、肝心の恋愛要素も薄い。かといって、名も無き人々に焦点を当てすぎると、『レ・ミゼラブル』と大差が無い状況になるだろうし、難しいところです。う〜ん(@_@)
(この記事はいずれ2015年7月1日 @ 21:30に移動します)