『大海賊/Amour それは・・・』宝塚歌劇団星組(2)★

今日の演目はミュージカル・ロマン『大海賊−復讐のカリブ海−』とロマンチック・レビュー『Amour それは・・・』の二本立て。宝塚の全国ツアー公演の場合、多くの場合、再演の作品が掛かります。直前の大劇場公演の芝居かショー、もしくは組やトップ・スターにゆかりの作品などが選ばれたりと様々です。今回はトップ・スターゆかりの作品。

まず、ミュージカル・ロマン『大海賊−復讐のカリブ海−』。2001年初演、紫吹淳さんの主演お披露目公演。だけれど、東京宝塚劇場落成の年でスケジュールが変則的だったため、東京だけで上演された作品です。その後、全国ツアーでも上演されました。今回、星組のトップスターとなった北翔海莉さんはそのいずれにも出演していました。

その『大海賊』。既に公演が始まっているのでネット上にも感想などがアップされ始めていますが、あまり芳しくないような感想もちらほら。では、僕としてはどうだったかと言うと、普通に楽しめたのですが・・・ 普段、もっとヒドい脚本に接しているからか、宝塚の脚本で悪いと思うことはあまりありません。今回は全国ツアー公演と言うこともあり、暗転幕の昇降が遅かったり、音響のバランスがどうなのと思ったり(これは席にもよるので一概には言えませんが)の方が気になったのですが、それ以上に今回はトップスターが百難隠す(もちろん、そんなに難はなかったけれど)公演だったと思います。

北翔さん。確かに登場シーンの少年期は確かにどうなることかと思いましたが、それも出だしだけで、あとで思い返してみればエミリオの成長過程がきちんと演じられていたと感じられましたし、何よりそんなことを全て忘れさせられるほど、一つ一つの場面の見所がたくさん。北翔さんの素晴らしいところは沢山ありすぎるのだけれど、感情を前面に出す場面で他の生徒との差が出るような気がします。

たとえば、後半のエドガーにとどめを刺すのを躊躇う場面やヒロインの最後を看取る場面など、あぁいう場面で北翔さんはきちんと、気持ちを持って行ってくれるなぁと感じます。そこからの最後の歌が単に美しい歌唱に終わらず、その感情をつないでくれるから、物語の結末がジーンと心に残るのかなぁと思います。それもこれも、感情を前面に出しても男役の方が崩れないからかもしれません。

北翔さん以外で印象に残ったのは礼真琴さん。まぁ、今更、僕がいうまでもなく星組期待の若手と名高いわけですが、初めてちゃんと認識して観てみると、その理由が良くわかりました。歌も踊りも芝居も確かだし、何より視線の流し方が良い。各組にいる95期の中でも思いあたる限りでは、やはり図抜けた存在なのではないかなと思います。

『大海賊』では『キッド』という3番手相当の海賊を活き活きと演じていました。何が良いと言われると難しいのですが、やっぱり目だなと思います。視線の使い方に何とも言えない雰囲気があり、そこに上手な歌とキレのある踊りを見せられては、注目せざるを得ないでしょう。エミリオ(北翔)が船長に就任した直後の曲では北翔さんの客席降りの間、席が前の方だったので、後ろは向かずにずっと舞台の方を観ていました。もちろん舞台上の全員が北翔さんの方を観ているわけですが、真っ直ぐに見据える視線の力強さは、やっぱり群を抜いた存在感と魅力があるように感じました。

えぇ、すっかりファンになりましたが、何か?( ̄^ ̄)ゞ

・・・さて、今回の演目『大海賊』選択への賛否も分かれるところですが、北翔ファンでほとんど星組を知らない僕のようなものからすると、今回の公演で確かに顔と名前がかなり一致するようになりました。役名が多く印象的な芝居が多かったからかなと思います。星組に疎かった僕も、今回で全国ツアー組の中心メンバーの顔と名前はだいたい一致しました。そういう意味では北翔さんが連れてくるだろう新しい星組の観客に星組の生徒を紹介するという、この作品を選んだ目的は達せられているのではないかとも思います。星組を十分に知っている人にとっては物足りないかもしれませんが、星組素人の僕でも、これで本公演を観に行っても、『誰が誰だか』という状況は脱したかなと思います。

(この記事はいずれ2015年6月24日 @ 23:35に移動します)

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