『エリザベート』宝塚歌劇団花組(1)

今日は東京宝塚劇場に花組公演『エリザベート〜愛と死の輪舞〜』を観に行ってきました。この公演は明日海りおさんのトップお披露目公演。新人公演を観たことのある人がトップスターになるのは初めてなので『いよいよトップかぁ………』とか、客席に元月組のトップコンビの瀬奈じゅんさんと彩乃かなみさんが観に来ていて、そういえば『Me And My Girlの新人公演は明日海さんだったなぁ』と色々、妙な感慨があったり。

思い返してみると、宝塚の『エリザベート』を観るのは3回目なのですが、過去2回は共に月組公演だったため、タイトルロールのエリザベートを男役が演じていました。なので、娘役で『エリザベート』を観るのは初めて。

さて、今回の『エリザベート』。今までは作品全体に様式の強さがある感じでしたが、今回は少し自然な言い回しや仕草が多くなっていたように感じました。それが物足りなく感じる人もあるかもしれませんが、個人的にはこの方がスッと物語が入ってきて良い感じでした。特に皇太后ゾフィーの周辺でそれが多かったかなと。2幕の『ゾフィーのサロン』でゾフィーと大司教のやり取りで笑いが起こっているのを初めて見ましたし。

そういったこともあってか過去2回の月組公演、もしくはDVDで観た過去の公演とは、かなり印象の違う感じがしました。

まず、明日海トート。ビジュアルの美しさは歴代で随一ではないかという完成度。何を演じても美しく仕上がるのは明日海さんの凄いところ。しかし、明日海さんの凄さはビジュアルだけではなく、苦悩するキャラクターを演じると、観ていて痛々しくなるほどの切なさを醸し出せるところ。2幕の葬儀後の『愛と死の輪舞』での銀橋渡りはホントに良い感じでした(>_<)

次いで、蘭乃はなさんのエリザベート。1幕前半の少女時代がよく似合っているのは想像の範囲だったのですが、むしろ旦那様であるフランツとの関係に悩む姿が物語の後半に進むにつれて色濃く浮かび上がっていました。今までのエリザベートはフランツを拒絶しながらトート(死)の誘惑に抗うような印象を受けていたのですが、今回はフランツとの関係を何とかしなければという苦悩を抱えながら、トートを拒否するような印象を受け、それがトートの苦悩もエリザベートの孤独感も色濃くさせていたように感じました。

そして、何よりやはり北翔海莉さんのフランツ・ヨーゼフ。皇帝としての義務とエリザベートへの愛の狭間で苦悩するフランツを北翔さんらしく人間味あふれる姿で表現されていました。特に1幕で最後通牒を渡される場面や最後の鏡の間、2幕の安らぎのない年月でのエリザベートへの語りかけは心に響いた。圧巻は葬儀の場。場が始まって、フランツがルドルフの棺に寄り添う姿に思わず涙が。

このトート、エリザベート、フランツの良さが葬儀の場以降、際立っていきます。特に『夜のボート』が素晴らしかった。今まではこの場面に進む頃にはエリザベートの拒絶感が強くて『すれちがい』という感じには思えなかったのですが、今回はフランツのまっすぐな愛情とエリザベートのそれを受け入れられない気持ちが浮かび上がり、『すれちがい』という表現がとても相応しい印象を受けました。

それがあっての霊廟でのトートとフランツの対決。どうもこの場面はフランツの負け惜しみ感が漂うことが多かったのですが、北翔フランツの言葉はエリザベートの愛を微塵も疑わない強さがあるように思え、それならばトートも動揺するだろうと思えるものでした。

他にも見所はたくさんありましたが、この真ん中の3人のバランスが素晴らしくて、初めて物語としての『エリザベート』を感じられたような気がしました。キャスト次第で作品の印象は随分と変わるなぁと感じた公演でした。

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