約束(後編)

今年度の始まりから関東大会までの振り返りの続き。

12月1日。第54回関東高等学校演劇研究大会・栃木会場の打ち合わせ会。埼玉県の3校は昼集合の全体会→午後ヒヤリング。抽選会で2日目の1番に決まる。一瞬、「朝一かぁ・・・」と思いましたが、すぐに悪くない順番だと思い直します。栃木の会場は舞台と道具置き場がかなり離れているので、直前の立込はバタバタします。本番前にバタバタして忙しなく本番を迎えるよりは、前日の夜に立て込ませて頂く方が良いだろう、と。それにクリスマス上演を確保できたわけだし。これで新座柳瀬での3回の関東大会は12月24日・25日・24日といずれもクリスマスの上演、『クリスマスに呼ばれる演劇部』なのです。

12月8日。期末テストの合間の土曜日。朝から部長を連れ立って岐阜へ。岐阜県の中部日本大会壮行公演にあたる『ハイパーハイスクールシアター2018』を観劇。初めて長良高校さんの劇を観劇。映像で観ていたので基本的な構成は分かっていたけれど、ブロック大会に向けて科白がかなり整理されていて、内容が分かりやすくなっていると感じました。それに何より役者の皆さんが本当に上手。ウチとは違い男女混成チームなので、同じ作品なのだけれど全く違った印象を受けるというとても不思議な感覚でした。そして何より、普通に笑って観てました。本当に面白かった。アプローチは色々だけど、こういう面白みだって演劇の醍醐味だと改めて感じ、

上演後、顧問の先生に連れられてバックヤードへ。忙しく搬出作業をされている中、部員の皆さんと少しずつお話をさせて頂きました。もちろん、ここでチャジブル牧師を演じていた山田くん(仮)とも遭遇。なんか本当に幸せな時間。だって、ウチ以外でアーネストとか、アルジャノンとか、グウェンドレンとか、セシリーとかといった役を演じている高校生に出逢う日が来るなんて! そして、翻訳・脚本を担当された先生にもご挨拶させて頂いて、慌ただしくも楽しく幸せな時間を過ごさせて頂きました。ただただ、演劇の神様に感謝。

その上、明日に入試を控えた部員さんが帰ろうとした時に、顧問の先生が「これを持って行きなさい」と安倍晴明印の刻まれた晴明神社の水鏡守を取り出された。去年、就職試験前のオルゴンに渡したお守りと一緒。「あぁ、こんなところまで似ているのか」と思った瞬間。こうなってくると演劇の神様だけじゃなく、本当に運命の神様が壮大な仕掛けを動かしてくれているような気すらしてきます。

そして、別れ際。顧問の先生が岐阜駅まで送ってくださることに。顧問の先生と長良さんの部長のグウェンドレンと一緒に駐車場へ。甲府南さんや精華さんの時と同じように、本当に同じ舞台で上演したいなぁと思いました。そして、その可能性は佐賀総文か春季全国の2通り。それでも言葉にしておこうと、駐車場の門を開けてくれているグウェンドレンに。

稲葉「一緒の舞台に立てたら良いね」
グウェンドレン「できれば、佐賀で」
稲葉「お互い頑張ろうね」

と顧問の先生のクルマに乗り込みました。この時のグウェンドレンは本当に男前な表情でした。格好良かった。この時に「これは長良さんは行くぞ」と思った。だとしたら、あとはウチ次第。ここからちょっと本気になりました。精一杯の準備をして、後は演劇の神様や運命の神様に任せようと。関東前6回の感謝祭公演などもその一環でした。

12月21日、栃木に移動して、関東大会リハ日。リハーサルは多くの先生方や生徒さん、技術スタッフさんのご協力によりスムーズに終了。中央発表会の時と同じように順調に進みました。翌日は午前中に1本通して、午後はオフ。僕はホテルで縫い物。

12月23日。関東大会初日は昼から午後にかけて稽古場割当てがあったので、僕が関東事務局長会議に出ている間に自主稽古、戻ったら1本通すというぐらいで終了。その日の夕方。中部日本大会で長良さんの上演が終わると上演について高印象なTweetが次々と流れてきます。「あぁ、上手くいったんだな」と嬉しくなりました。この反応を審査員が共有できていれば、きっと大丈夫だと。

そして、12月24日。朝早くから準備を始め、8時10分に小屋入り、発声代わりにすぐに1本通します。そこから楽屋に入って準備して、10時から上演。序盤、少々走り気味でしたが、全員が1度登場した当たりからは落ち着きを取り戻し、お客さまの反応も次第に頂けるようになって、無事上演は終了。作り手からすると色々とあったけど今の精一杯は出せたかなという感じ。上演を終えて、ロビーに出たところでnatsuさんと会い、「どうでした?」と聞くと、「良かったんじゃないか」と。これで一安心。

そして、審査結果の発表。最優秀賞。僕の埼玉県での師匠にあたるnatsuさんが、かつて所沢高校を率いて、『エリアンの手記』で全国大会を決めた同じ会場で、全国大会への推薦が決まる。natsuさんの言っていた『縁起の良さ』が姿を見せた瞬間でした。僕に取ってはこれ以上ない劇的な出来事。そして、今度は僕たちが長良さんを待つことに。

12月26日。年末、色々と出かける予定を入れていたのだけど、この日だけはあらかじめ予定を入れず、午後はずっとTwitterに張りついていました。15時半過ぎ、中部日本大会の結果が流れ始め、長良さんが最優秀賞と分かりました。ホントに嬉しかった。他の学校のことでこんなに喜べるかというぐらいに涙も溢れる。これ以上ない形で同じ会場で上演するという希望が一番高いところで叶ったのだから。

そして、12月27日。高校演劇サミットの初日。久しぶりに平田先生にお目にかかれた。前日にTwitterで騒ぎすぎたせいか、平田先生もすっかり事情をご存じの様子で、

「演劇の神様って、いるんですねぇ」

と喜んでくださった。振りかえってみると少し出来すぎた話。

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