第65回埼玉県高等学校演劇中央発表会(作品)

今回は上演前に作品について書かなかったので、たくさん頂戴したアンケートなどを見つつ、作品についてまとめておきたいと思います。

今回上演した作品『Love & Chance!』はフランスの劇作家ピエール・ド・マリヴォーの代表作『愛と偶然の戯れ』という作品を翻案したものです。2014年3月の卒業公演用に書いた作品で、当初は100分の作品として書きました。ちなみに当時、この作品を選んだのは、その時の卒業生が宝塚の星組ファンだったため。2011年の星組公演で『めぐり会いは再び』という『愛と偶然の戯れ』の翻案作品が上演されました。そんなこともあり、卒業公演の演目を選ぶ際に『愛と偶然の戯れ』の原典に当たって、これは色々とアレンジできそうだとなって、相談の結果、その年の卒業公演に選びました。

今回、これを再び選んだのは、3年の2人の科白を聞いてもらうには、どういう作品が良いだろうかと考えてのことでした。そこで、真ん中の4人の激しい科白の応酬のあるこの作品が相応しいのではないかと考えました。ちょうど、3年が中学生のことにこの作品を観ていたこともあり、この作品にという流れになりました。しかし、卒業公演の時は100分の作品として作ったので、かなり大規模にカットを入れたので、結局はほとんど新作のような感じになってしまいましたが・・・

さて、今回の上演でご指摘が多かったのは舞台装置。地区の皆さんやコピス組の皆さんにとっては、たぶん見慣れたウチのパターンのセットだったと思います。強いていえば中央の大きな扉が珍しかったかなと。『豪華』と書いてくださった方も多かったのですが、今回は中央発表会用に山台を作り直しましたが、使用している木材の半分以上は再利用品で最も古いものはnatsuさん時代の山台を組み直したときに余った木材なので、十数年以上前のもの。パンチカーペットはコピスで使ったものを再利用。物を保管しておくスペースがあるのは恵まれていると思いますが、予算については公立高校ですから、工夫と節約でやり繰りしています。

ちなみに扉は、このブログでお馴染みの新聞紙を貼った扉でした。新聞を貼ると少し違った質感を出すことができます。何か変わった質感のものを作ろうとする時には新聞を貼ってみると良いと思います。ただ、ブヨブヨと空気やノリが入ってしまうと逆効果なので、まずは不要になった端材のベニアなどに貼って練習をした方が良いと思います。

次いで衣装について。これも今回の公演のために購入したものは、ほとんどありません。この5年ぐらいの間に必要に応じて用意してきたストックが随分とありますので、その組み合わせです。例えば、ヒロインのメイド服は去年のクリスマス公演で使ったものですし、偽ご主人様の衣装は5年前の『I Got Rhythm!』に登場した偽侯爵の衣装です。こちらも一度買った物をちゃんと手入れして保管しておくことによって節約を図っています。

発声・滑舌について。科白が早いのにちゃんと科白が聞き取れたというアンケートの記載が割りと多く観られました。発声については3月の卒業公演が終わってから、発声練習の仕方を変えました。今までも色々と発声については勉強をしてきましたが、今回の方法は割りと良かった気がしています。今年の春祭では声の聞き取りにくさが指摘されましたが、半年が経って効果が現れてきています。しかし、まだまだ。発声と滑舌は密接な関係にあって、発声にゆとりができると無理しなくてもクリアに発音できるようになるので、滑舌を見直したい時は是非、発声から見直してみると良いかもしれません。

個人的にはいわゆる『高校演劇』の科白は総じてゆっくりすぎると思っています。なんというか、科白のスピードで会話の成立などを判断する人もいるようですが、『高校演劇』のような科白のスピードは『高校演劇』でしか観たことがないような気がします。もちろん様式としては良いのでしょうが・・・

物語について「ドラント側の正体を明かすのが早すぎて、物語後半でカタルシスを感じることができなかった」などのご意見を頂きました。が、これはそういう話ではありません。例えば、原作でドラントとアルルキャンが入れ替わっているが観客にバレるのはいつかというと、2人が登場する前です。登場前に伯爵がシルヴィアの兄に向こうの2人も入れ替わってくるとバラしてしまいます。つまり、この作品は元々の構造が観客は全てを知った上で『入れ替わっている2人がそれぞれに悩みを抱える姿を楽しむ』作品なのです。もし、ドラントの正体を物語の最後まで観客に明かさないように物語を組み立てると、ドラント側の悩みや受け止めが描けず、ドラントが随分と面の皮の厚い男のようになってしまい、結果として、薄っぺらい作品になってしまいます。戯曲分析は慎重にされた方が良いと思います。

最後に講評について。かつての『チャジブル“神父”事件』以来の事件が起きたので一応、ウチの生徒の名誉のために書いておきます。最近は慣れてきましたが、どうもウチの講評では、咄嗟に強い否定をしようとして誤った知識で批判を受けることがあります。

一応、ウチの生徒の名誉のために書いておきますが、ピエール・ド・マリヴォーは『フィガロの結婚』とは関係ありません。モーツァルトのオペラ『フィガロの結婚』の原作はマリヴォーより少し後の時代に活躍したカロン・ド・ボーマルシェ(ピエール=オーギュスタン・カロン)の同名戯曲です。その場で言い返してやろうかとも思いましたが、マリヴォーが関係ないのには自信があったのですが、その時はボーマルシェの名前が思い出せなかったのと、連盟が一生懸命選んでくれた審査員さんなのでグッとガマン(・x・)・・・にしても、ねぇ。

4件のコメント

  1. アンケートでカタルシス云々書いたのは当方かも知れません。
    大変良い芝居で御校の最優秀も充分あると思ったし、大いにほめさせてもらったつもりが、殴り書きで失礼な書き方をしていたら申し訳ありませんでした。
    県大会からだいぶ時間が経っているので記憶違いがあることを覚悟で記しますと、劇中の設定から生じるはずの悩みや葛藤が十分に出きっていないように観劇時に思い、その原因が種明かしの早さにあるように当時感じたように記憶しています。
    それに伴うキャラクタの変化についても、登場人物は見合い相手を試すなどの(面の皮の厚い)行動を結構取るので、バランスも取れる範囲内だと当時考えていました。

    当方は高校にも演劇にも無関係な一介の素人ですが、書いた覚えのある感想への反応に触れられて驚きもあり嬉しくもあります。凄い時代になったものです。
    御校のあの芝居をもう一度観たいと思いつつ、新潟は遠くて行けないので壮行公演でもないかと探していたところ、ここにたどり着けて幸いでした。

    関東大会直前に雑文失礼しました。公演の成功を心から祈念しております。

    1. コメントありがとうござます。
      また、ご観劇ありがとうございました。
      アンケートは色々と書いて頂ける方がありがたいものです。僕自身、アンケートはしっかりと読みますし、特に脚本を書くようになってから上演したアンケートは全て保管してあります。
      ここからは人それぞれですが、僕にとっては『こうした方が良い』よりも『こう見えた』『こう感じた』と感じたままのご意見の方が参考になります。その方が伝えたかったものと伝わったもの差を知ることができるからです。たとえば、『劇中の設定から生じるはずの悩みや葛藤が十分に出きっていないように観劇時に思った』と書いてくださると、『じゃあ、伝わるようにするにはどうしたものか』と考え始めたりします。なので、今回はアンケートの真意をお伝え頂けて良かったなと思います。
      さて、それはそうと関東前に試演会を行います。親しい学校さんにはお声がけをしていますが、会場が狭いので大々的には広報していません。でも、これも何かの縁ということで、もし、ご興味がありましたら、ご案内差し上げますので、アドレス付きでコメントくださればと思います。

  2. 返信いただきありがとうございます。
    これに限らず代案なき批判はできるだけ避けるようにしているのですが、今回は勢い余って代案しか書いていなかったかもしれません。

    改めまして試演会にお声がけいただきありがとうございます。
    ご迷惑でなければ、厚かましくもぜひ観劇させていただきたく存じます。
    メールアドレスを入れておりますので
    よろしくお願いいたします。
    当方の氏名や連絡先はそちらでやり取りさせてください。

    1. コメントありがとうございます。
      先ほど、メールさせて頂きました。
      ご来場、お待ちしております。

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