『声優』というお仕事が注目を浴びるようになって随分経ちます。需要があれば商売が成り立つわけで、声優養成の専門学校も増えています。学校の先生としては、『声優養成の専門学校へ行く』と言われれば1度はとりあえず他の選択肢はないか促すのではないかと思います。しかし、最近の専門学校も上手なもので、大手の専門学校などは入学後、そういう生徒も上手く普通の職業へと誘導して、就職させていったりしますので、以前よりはとんでもない選択肢ではないかなとも思います。
例えば僕もクラスの生徒がそう言い出したら、別の意味で反対をします。簡単に言えば『そんな覚悟、ホントにあるの?』と真っ向から。専門学校に通えば慣れるものでもないし、何となく楽しく過ごして何かが身につくなんてのは幻想だと思います。それもプロになろうとするならば、あらゆる努力を惜しまないような姿勢がなければ成功しようもないわけですから、その覚悟を問うわけです。それで怯むようではお話にならないと思います。
また、最近は演劇部や放送部にそういった目標を持った生徒が入ってくることも増えているように思います。ウチの学校も御多分に漏れず、そういう生徒がたくさんいます。しかし、演劇部は壮絶に厳しいことが透けて見えるので、放送部の方が人気があります。それでも勇気を持って、演劇部に入った生徒も意外と早くにやめてしまう傾向があります。『思っていた以上にツラい』とか、もしくは『声優になりたいのであって俳優になりたいわけじゃない』とか、理由はそれぞれですが、なんとなく憧れてるわりには甘く考えているなぁという印象です。
そんな中、それでも地道に稽古を続けて、3年間きちんと続ける生徒もいます。ウチの演劇部にいれば、練習の必要性も何かを身につけには相応の努力が必要であることも理解しているでしょうし、そういう経験もしてきています。姿勢として、自分に厳しく物事に取り組める部員は役者として信頼できますし、懸命に練習している姿を見ていると、なれるかなれないかは本人次第だけれど、何かしてあげてもいいかなと思うわけです。安易な勘違いもしないでしょうし。
前段の話が長くなりましたが、そこで三者面談のこの時期に、卒業生のKにお願いをして、声優養成の専門学校どんな感じだったか、今のお仕事はどんな感じなのかなどを聞いてみようと思い立ち、稽古見学がてら来てもらうことにしました。まぁ、同じ練習をしている先輩・後輩ですから、経験にも互換性もあるだろうと思いますし。誰かの経験談を聞く時に、今回の場合は特に『練習』という言葉の重みに同じ重みを感じていないと、話の内容を甘くみることになってしまいますから。
稽古の後、実際に話を聞いてみると、想像に違わず大変な世界であると感じられました。例えば専門学校は同期が300人ぐらいいたけれど結局は3人ぐらいしかそうならなかったことや、そうなったとしても決して順風満帆という訳ではないことなど、実に率直な話を聞くことができました。あまり細かいことは書かない方が良いと思うので省きますが、ウチの部員も華やかに見える世界の現実的なことの一端について知ることができたのではないかと思います。
印象的だったのは、なかなかオーディションに通らないことについて『自分の実力が足りない』と言い切ったこと。最近の彼女について詳しく知っているわけではないので、それが妥当な評価かどうかはわからないけれど、自分について厳しく評価ができて、ストイックかつ前向きに仕事に取り組んでいる姿勢が大切なのだと感じると共に、こういう子だからその道を歩めているのかなとも思いました。
・・・ということで、うわばみのお嬢さんには近々、焼き鳥屋さんでお礼をする予定です。
(この記事はいずれ2015年6月4日 @ 22:00に移動します)