『星の王子さま』についての一考察

8月に初稿が上がり、9月上旬に初演。ここまではいつも通りタイトな日程だったけれど、そこから2演まで中1ヶ月。脚本が上がってからの稽古期間がいつになく長い。

稽古期間が長くなると、技術的なことはある程度を越えると今は越えられない壁に行き着きますし、日々劇的に変化することは無くなります。

そうなってくると、次第に稽古をつける時間よりも話をする時間が長くなってきます。なんでそうなってくるかというと、結局のところ最終的には物語が腑に落ちてくれないとそれぞれの役の役割は理解できないからです。思い返してみれば色々な演出家の稽古を受けてきたけれど、いつも最後は細かい演出を受けるよりも演出家の作品感を聞いていたような気がします。

というこで、最近は色々と話をしているのですが、その中から1つだけ。

『王子さまはなぜ、死を選んだのか?』について。

この作品を書いたサン=テグジュペリはこの物語の結末について、王子さまは死を選んだと明確に述べています。物語の最後は王子さまの死でなければならないとも述べています。

しかし、原作ではヘビに噛まれた後、王子さまの姿がなくなっていたと死の暗示を弱めています。今回の脚本では(この辺が脚本が宝塚っぽいと言われる所以なのでしょうが………)エピローグに救済のシーンを入れているため、取りようによってはその辺が曖昧に見えるかもと思いました。

なので、割と早い段階でキャストにハッキリと伝えました。

『ここで王子さまは死ぬんだからね』と。

その結末になぜ、王子さまは向かったのか。それを考えないと作品全体を正しく捉えることができないと思ったからです。案の定、『えっ?』といった反応でした。話しておいて良かったと思いました。

この物語の時系列は王子さまの小惑星にバラが一輪咲いたところから始まります。そして、バラとすれ違った王子さまは自分の惑星を飛び出し、冒険の旅に出かけます。その旅で様々な出逢いとともにバラが儚く、自分にとってかけがえのない存在であることに気づきます。

ここからは僕の解釈です。王子さまはヘビに噛まれることを選びます。王子さまは『僕の星は遠いから、身体は重すぎて持ってはいけない』と飛行士に言いますが、それまで地球を含めて7つの星を渡ってきた王子さまが、突然、星を渡る手立てを失ったのは不可解です。

では、何処へ帰ろうとしているのか。彼は長い旅を通して学び、気づいたのです。小惑星B612に帰っても彼女はもういないことに。彼の花は儚い存在だからです。彼はそんな星に帰りたかったのか? そんなはずはありません。絆を結んだキツネや飛行士と別れてまで帰りたかった場所は、きっとバラと過ごしていた『あの日の僕の星』だと思うのです。

そう考えれば、バラと再会できる唯一の方法としてヘビに噛まれるという選択が理解できるような気がします。となれば、やはり王子さまが飛行士との別れで覚悟すべきことは死であって、僕の星に帰れるとか、僕の花に会えるというような甘いものではないのだと思います。

と、ご意見は色々あると思いますかが、今回の脚本はそんなことを考えながら書きました。

なので、ここがしっかりしていないと、物語が浮ついてしまうのではないかと考えていました。作品を観た方がどのように解釈するかは観る方の自由ですが、作品に携わる側は1つの結論に向かっていないと、テーマの陰影がぼやけてしまいます。

なので、ここまで具体的には話しませんが、最後がそこに行き着くように、自分の役がどのような役割を果たしているのかを考えて、演技のプランを考えるようにと話をしました。

実際、そう仕上がっているかはまだ分かりませんが、そんなことを考える日々が続いています。

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