実は月組の全国ツアーを観ながら、ふとnatsuさんのブログで展開されていた話が頭に過ぎりました。これは観劇の感想というよりも、作品作りに関係あることなので別に書いておきます。
全国ツアーのように色々な劇場を回っていく場合、バトンの数に制約があったり、舞台袖の奥行きの問題から持って行ける荷物の量などに制約が出てくることは想像に難くありません。そのため、特に今回の芝居『JIN』の舞台転換が苦しそうでした。
『JIN』は漫画が原作のせいか、とにかくシーンが飛びます。1時間30分で16場。長短はありますが平均6分で転換があり、シーンの中でも細かな転換があります。しかも、場面はどれも抽象に振りづらい。
宝塚大劇場や東京宝塚劇場のような専用劇場であれば盆を回したり、迫り上がりを利用したりしてセットの転換ができるし、大きな転換はスターが銀橋で歌っている間に暗転幕の裏側でしたりと、暗転を作らずに転換できるわけですが、全国ツアーの制約か、1枚の紗幕と引き割りの中割幕では、転換が舞台のスピードに転換が追いつかず、暗転が多く、長くなります。
一緒に観に行った宝塚ファンも、見終わっての最初の感想は『暗転が多い』でした。どうしても暗転が多かったり、長かったりすると観ている方としては気持ちが切れてしまいます。
やっぱり、暗転は芝居の敵だと思わざるを得ない。(←ここ重要(^^;)
ここからは全く宝塚と関係ありませんm(_ _)m
普段から暗転の芝居を観ていると『そういうものだ』と誤解して、作劇時に安易に暗転を挟みがちになるような気がします。たぶん、芝居に集中できないのも含めて『そういうものだ』と思ってしまうのではないかと思うのです。
作劇に触れるのは諸刃の刃なので避けたいところですが、よく場面転換がとても多く、暗転が多い創作脚本に対して、『漫画のような展開』という批判がなされることがあります。僕はそういうシナリオがダメだとは思いません。ただ、小説の登場人物の言葉を抜き出しても書いても、漫画の吹き出しの言葉を書き出しても舞台用の脚本にはならないのです。だから、小説や漫画のように舞台の脚本を書く人たちは、一度『舞台化』の作業をしなければならないのだと思います。
映像と演劇、小説・漫画と演劇の決定的な違いは、具象ではシーンを瞬時に切り替えることができないことで、限りなくそれに近づけるためには高度な舞台装置が必要になることです。どんなに優れた物語でも、流れるような舞台進行を考えないと台無しになってしまいます。
僕は(脚本の出来不出来はおいといて)具象の芝居は転換しない、シーンが変わる芝居では装置を徹底して抽象に振ることを心がけ、とにかく可能な限り暗転を避けています(ちなみに過去12作中、暗転1回が8作、暗転なしが4作)。
だって、ただでさえ脚本が拙いのに暗転中を多用する勇気はありませんから(+_+)
基本的に暗転は観客の気持ちを引っ張れる以上の長さにしてはならないと思います。なので、演劇部を担当するようになった最初の頃、暗転の多い芝居を観ると『度胸があるなぁ(@@)』と思っていましたが、数年前からは『ひょっとしたら暗転して当然と思っているのでは(゚o゚;;』と感じています。
たまにベッドを50センチぐらい動かすために暗転したりするのを見かけると、『お客さんの気持ちを考えて!』とか『もっと、”普通”の芝居を観に行ってごらん』とかと言ってあげたいけれど、先方の指導者の手前もあるのでグッとこらえることが多々。それに、
人のことを言えるほどの脚本が書けているわけでもないので説得力無いし(>_<)(←ここも重要)
う~~ん(@@)
一気に記事が入ったね。観劇記にはコメントしようがないけど、これは面白かった。
宝塚なんかでも、専用劇場を離れると転換に苦労するんだ。なるほど、そうだろうなと。
それにしても、高校演劇の方では、いつまでたっても暗転が減らないし、なんか全然気にしていないのじゃないか、暗転あって当然と思っているのじゃないかと思えてしまう状況。困ったものです。
芝居作り・舞台作りの基本的な約束事のようなもの、もっと顧問みんなで共有していかないと、知らずにがんばる生徒が可哀想だよね。
でも、きみがよく見せてくれる転換のテクニック、いつも感心しているのですよ。これからも、どんどん楽しませてください。
コメントありがとうございます。
今回は1カ所とても長い暗転があり、その時にそんなことが頭を過ぎり僕自身、少し冷めてしまったので、やはり暗転の数や長さは慎重に考えないとと改めて感じました。
仰るとおり、基本的な約束事は存在して『それを守れ』と言うことでは無く、『そこから飛び出す時は確信犯的であれ』ということかなと。でも、共有は難しそうですよね。natsuさん周辺はそうでも無いと思いますが、批評に弱い人が意外と多いような気がします。拒否が先立ち、変わらない。だから、観た人の感想や批評をしなやかに受け止めて、それを鵜呑みにせずに、自分らしく伝える工夫を考えられるようになりたいと切に思う今日この頃です。
さて、僕の転換については・・・ストーリーが拙いぶん、せめて飽きさせないようにしようと精一杯の結果です。でも、それが楽しませる工夫なのかなと思いますので、これからも頑張ります。