今日は14時まで川越でのお仕事。その後、川越駅まで送ってもらって東武東上線と東京メトロ丸の内線を乗り継いで『銀座駅』に到着、一目散に有楽町へ。
花組公演『愛と革命の詩-アンドレア・シェニエ-』。イタリアの作曲家ウンベルト・ジョルダーノが実在の詩人アンドレア・シェニエを主人公にフランス革命下のフランスの姿を描いたオペラをミュージカル化した作品。シェニエと伯爵令嬢マッダレーナの出会いから、フランス革命を経て、貴族の没落とジャコバン党の台頭、シェニエの反ジャコバン党活動などを描き、最後はシェニエの逮捕、革命裁判法廷を経て、シェニエとマッダレーナが断頭台へと向かうところまでが描かれている。
主演の蘭寿さんはこういう役が本当によく似合うと思います。宙組時代の『逆転裁判』のフェニックス・ライトもそうでしたが、信念や正義に生きる姿がこれ以上映える役者さんはいないのでは無いかと思う。今回のシェニエも詩人としての信念を曲げず、その結果としてジャコバン党を批判する立場となり、ロベスピエール失脚の3日前に処刑されるという悲劇へ突き進む姿を見事に表現されていた。たぶん、『真っ直ぐな強さ』みたいなものが揺らぐと裁判前に『政府に味方することによる助命』を持ちかけられたところで『もっと葛藤があるんじゃないの?』とかいう指摘が出てくるのだろうけれど蘭寿さんの『真っ直ぐな強さ』が取引を一蹴する姿に説得力を与えていたのだと思います。
そして、花組に異動して大劇場1作目の明日海さん。異動前の月組での公演が『ベルサイユのばら』でしたから、今年はフランス革命の1年となりました。明日海さんの役はマッダレーナの家に仕えていた召使でフランス革命を経て、ジャコバン党の革命政府高官となった青年カルロ。マッダレーナへの愛情とシェニエへの嫉妬と入り交じって、物語を悲劇へと動かしてしまう役どころ。蘭寿さんとは好対照に明日海さんは『揺れ動く弱さ』がこれ以上映える人はいないと思います。カルロは時代とともに荒みきれない、父親との確執やマッダレーナを奪い取ることもできるのに彼女の愛する人とともに死ぬという選択に荷担してしまう姿はシェニエに対してとても人間的で、明日海さんの持ち味である魅力がとても引き出されていたと思いました。
作・演出は植田景子さん。宝塚では流れるような展開で淀みなく進んでいた。宝塚らしい大恋愛劇でありながら、それだけに偏らずに革命の悲哀とのバランスを取りながら展開していくし、何より植田さんの演出の時は男役が格好いい。きっと、こだわりどころがあるのだと思いますが、下級生に至るまで立ち居振る舞いが違って見えるから不思議です。
ショーは『Mr.Swing』。芝居とはガラリと変わり華やかなショー。スイング・ジャズの名曲がズラリと並んだ楽しいショーでした。ショーについては明日海さんの水兵さんでの銀橋渡りがとても可愛かったことを触れおくに留めて、主に別の話を。
初めて宙組を観に行ったのは2009年9月。大空さんのトップ就任が決まって宙組も観ないとと思って、赤坂ACTシアターに『逆転裁判2』を観に行ったのが最初でした。主演は蘭寿さん。その時にディック・ガムシューという風変わりな警部の役を演じていたのが春風弥里さんでした。
春風さんというと作品の中でアクセントとなるような役が多く、『カサブランカ』のバーテンのサッシャ、『銀ちゃんの恋』の橘、最近でも『戦国BASARA』の伊達政宗などテンションの高い面白い分類に入る役が印象に残っています。でも、『ヴァレンチノ』のジョージ・ウルマンや『ロバート・キャパ』のチーキ・ヴェイス、『オーシャンズ11』のバシャー・ターなどホントは二枚目がよく似合う男役さんです。今回の芝居でも二枚目の黒い役を印象的に演じていました。
花組の東京公演は明日が千秋楽。その春風さんは明日で退団です。なのでショーでは春風さんへの拍手が厚かった。特に会場が春風さんに集中したのが『クール・スイング』のシーン。客席の雰囲気がフッと変わりました。観客の無責任な立場からすれば退団しないで欲しいなぁと思う瞬間ですよね。上級生が抜けることによって下級生が育つというのは良く分かるのだけれど、やっぱり上手なものを観たいというのもありますし、春風さんなんてホントに代わりのいない男役だと思いますし、退団が惜しまれます。
千秋楽直前のギリギリの観劇になってしまいましたが、観に来て良かったと思いました。今、宝塚を観たことが無い人を連れて行くなら花組かなと思えるぐらい、このところ良い作品が続いています。次回作で蘭寿さんが退団されるとまたバランスが変わってしまうので、次回作も見逃さないようにしないと。
結局、今年は特出アンドレから数えて、55回蘭寿とむを観に通いました。自分でも驚く溺れっぷりです。
まさかのお越しで驚いています。さて、、、
いやいや、今年の花組にはそれだけの価値があったと思います。
トップスターの魅力はそれぞれあるでしょうが、組力という意味では今は圧倒的に花組に軍配があがると思います。『スイングス』の場面など、あんなに肩の力を抜いてやられてしまっては観ている方は楽しむ意外にないというような完成度でした。次作で退団だなんてもったいなさ過ぎます!!!
たしかに「組力」です。脚本の矛盾など物ともしない、「物語の構築力」が蘭寿にはあって、そうして、口先だけでなく、みんなが蘭寿とむの背中を見てついていこうとしている真摯さが舞台の魅力を高めていますね。
「フルスウィング」は絶品でした。こんなことができるんだ!
蘭寿とむは出ないけれど、今年の締めにバウホールの楽に行ってきます。
層の厚い花組ですから蘭寿さんが出ずとも望海さんや瀬戸さんが中心であれば十二分に楽しめることは間違いないでしょう。お気をつけて、良い旅を。