このところの都知事の問題や参議院通常選挙、イギリスのEU離脱を決めた国民投票の報道の中で気になることがありました。何かというとこの報道を巡るキャスターやコメンテーターの話の中に直接民主制と直接選挙をゴッチャにしている人がいること。
簡単にどんなことを言っていたかというと、
イギリスのように成熟した民主主義国家でも国民投票では思いもかけない結果を出すと言うことです。直接民主主義に重要な問題を委ねるというのは非常に危うい。日本は間接民主制ですから国民が議員を選び、首相を選びます。ただ、一方で都道府県や市町村長などの首長は直接民主主義で選びます。しかし、昨今問題となっているように都知事選などは人気投票の様相を呈してしまって、その結果が昨今の都知事の問題につながっているように思われる。世界を見てみても大統領を国民が直接選ぶアメリカでもトランプ氏のように過激な主張に響いて旋風が巻き起こる。イギリスの例を見ても、アメリカの例を見ても、やはり直接民主主義というのは危うい印象を受けます。
・・・というようなことでした。
う〜〜ん(@@)これは言い間違いじゃなくて勘違いだよなぁ〜〜
大前提として、アメリカも日本も間接民主制の国です。直接民主制は有権者が直接、政治に関わるものですから、『有権者数=議員数』となります。簡単に言えば、『現在国会や地方議会で議論されていることを有権者全体で話し合い、評決を行う』ということです。イギリスのように重要と思われる事項について国民投票を行って、部分的に直接民主主義を取り入れている国はあります。しかし、大統領制の国を『直接民主制の国』というのは明らかなる勘違い。
言うまでもなく、アメリカの大統領や日本の地方自治体の首長を選ぶのは『直接民主制』ではなく『直接選挙』です。『直接選挙』でも結局は有権者に変わって政治を行う代表を選ぶわけですが、この場合は人気投票的な要素やその時の政治状況などによって、思わぬ結果が出るという意味では、前述のコメントのようなニュアンスがあるのは理解できます。でも、間接民主制は間接民主制(^_^;
国民投票でも、直接選挙による選出にしても、『短期間に国民の意見を直接、問う』というのは危険な要素を持っていることは間違いありません。
趣旨としては理解できたわけですが、言葉は正しく使いましょう。
う~ん。ちょうど私も「代表制」の問題を考えていました。古代社会の王も、中世社会の領主も「代表」には変わりありません。「代表」を投票で選べば民主主義であるといえるのか? よく言われるようにヒトラーも選挙で選ばれました。では、ナチス下のドイツは民主主義社会であったといえるのか? ここで誤解してはならないのは、ヒトラーは少なくともその時代のドイツ国民の代表として選ばれたことを認めなければならないということだと思います。扇動や謀略があったなどという理由は代表であることの否定にはなりません。その前提に立って「代表制」と民主主義が両立するためには、国民の側が権力をチェックし、コントロールする能力と手段と覚悟を持っているかではないかと思います。リコールなんかも成立するのはせいぜい市町村レベルでしょうから、難しい問題ですが。
コメントありがとうございます。
今回は『直接民主制』と『直接選挙』の違いについて指摘したかっただけなので、途中まで書いて消したのですが、当初はドイツの話題にも触れていました。
yassallさんの指摘されている『ナチス下のドイツは民主主義社会であったといえるのか』という点はヒトラー政権下はほぼ全期間、全権委任法の効力下でしたから民主主義社会とは言えないと思います。むしろ、yassallさんの心配は、当時最先端の民主憲法と言われたワイマール憲法は何故、ヒトラーのような『代表』を生み出してしまったのかという点ではないでしょうか。戦前のドイツの民主主義はヒトラーが壊したように理解している人が多いと思いますが、実際はざまざま政治家たちが民主憲法の理念をなし崩しにしてゆき、その隙間を縫ってヒトラーが台頭した時には、既に憲法は形骸化し、独裁者の登場を止めることができなかったのです。yassallさんの仰るとおり、間接民主主義では必ず代表を選ぶことになりますが、有権者は権力を監視し、ルールを無視する代表はそうそうに退場させる必要があります。しかし、今回の通常選挙のような投票率では権力者の気を引き締めることはできないでしょう。難しい問題です。