『演技と演出』平田オリザ

演劇について勉強をしようと注文した本が続々と届き、自室の机の上に積まれ始めた。平田オリザ著『演劇入門』から読み始めたが、続いて同氏の『演技と演出』を読むことにしました。

また、参考になりそうなことを書き留めておこうと思います。

俳優は、放っておくと自分の解釈通りに演じたがるものです。そこで、まず大事なことは、いったん台詞の意味内容から、自由になることです。もっと簡単に言えば、台詞はどんな言い方をしてもいいのです。(平田オリザ著『演技と演出』講談社 2004年 P.60)

最近、良く感じて稽古中に良く指摘していたことなので、読んでいて改めて感じたのですが、人間の言葉というのは字面通りの意味で発せられているとは限りません。心とは裏腹なことを言うことが往往にしてあります。著者の意見とは異なり、僕は科白を発語する際の気持ちは重要だと思いますが、言葉の意味から気持ちを考えるのには反対で、科白の意味に縛られずに、前後の関係性から気持ちを類推していくことが大切ではないかと考えています。

演劇の経験者でも、演出家や指導者に恵まれないと、強い癖が残ったままになっている場合が多くあります。(平田オリザ著『演技と演出』講談社 2004年 P.62)

これは絶対に必要だと思っています。新入生が入ってくると最初にするのが一人一人の癖の把握です。そして、最初はスッと立ち、科白が言える状態を目指して、徹底的に癖を取るための稽古を積み重ねていきます。これを直さないと『何を演じても同じ』という結末が待っています。この部分では著者は『癖をすべてなくす必要はない』と展開していきますが、一度は完全に無くすつもりでいかないと、なかなか癖を打ち消すことはできません。

スッと立ち、科白が言える状態になったら、今度は動くことを始めます。ウチの部活でも入部したばかりの部員についてたびたび『動きが固い』と指摘されますが、著者の言うとおり、癖をそぎ落としたところから再び動き出す時はとてもぎこちない動きになるのです。しかし、そこからの動きは『動かそうと思って動かす動き』になるので、見せ方を意識した動きができるようになっていきます。この辺は僕が指導を受けた演出家の先生たちは皆仰っていたことなので、僕の感覚に染みついているのかもしれません。

演出家は、まず、観客の想像力の幅を見積もらなくてはなりません。これは直截に言えば、どのような観客(観客層)に見せるのか、見せたいのかということです。大衆的な作品ならば、観客の想像力の幅を、相当狭く見積もらなければなりません。初めて演劇を観るお客さん、深いテーマにはあまり興味のないお客さんにも、関心を持って観てもらうには、ある程度分かりやすい「見せ方」が必要になります。(平田オリザ著『演技と演出』講談社 2004年 P.125)

これも大切な観点だと思います。物語にしても舞台美術にしても、どう観てもらえるのかは毎回、不安なところです。何処まで書くか省略するか、作り込むか省略するか、これがなかなか難しく、色々と作戦を考えるのですが、当たったり外れたりで未だ安定しないのが実際のところ。著者も最後は経験値がものをいうような感じでまとめていますが、実際に作品を舞台にかけてみるまで観客の反応は分かりませんから、難しいところです。

また、これも育ってきた環境が大きく影響しているのでしょうが、再び劇場に足を運んでもらう、映画館に足を運んでもらえるように工夫し、『楽しんでもらう』ことが何より大切であると叩き込まれています。僕の作品の多くがコメディーを基調にしているのもそのためです。だから、見せ方には相当に気を遣っていますが、上手くいくこともあれば上手くいないことも多いのが現状です。だから、自分の作品に酔っている人を見ると見ていて恥ずかしくなることがあります。

………読んでみて『なるほど』と思う部分はたくさんあり、本書の中で展開されている実践と検証は、今まで気づいていなかったようなことが具体的に示されていて、大いに参考になるものでした。でも、そこから展開される著者の考察・論述には、やっぱり、なぜか共感できませんでした。

『演劇入門』を読んだ際にも少しモヤッとしたのですが、そのモヤの実体が少し分かってきた気がします。オブラートに包んで言うと、役者方面から演出をするようになった僕は著者よりも、もう少し役者の力や創造性を信じている部分があるのだと思います。何となくですが、『演出家から分からないことはどうでも良い』という突き放した感覚に違和感を感じるのかもしれません。論旨をくめば、おそらく役者の内面に深く介入していく演出家に対する批判もあって、そういった面が強調されているのだろうとは思うのですが、やっぱり違和感を感じてしまったのでした。

しかしながら、引用した部分以外にも参考になる部分がたくさんありました。取り入れられる部分は取り入れていきたいと思います。

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