『バスに乗る、九月、晴れ、帰り道。』甲府南★

(この記事はいずれ2017年10月14日 @ 23:00に移動します)

他地区の発表会を観に行くことは滅多にありません。日程的に重なることも多いし、発表会前は見に行く余裕は無いし、終わった後は休ませてくださいという感じ(>_<) まぁ、理由はそれだけではないのですが。そんな中、今日は今年2度目の山梨小旅行。6月の文化祭を観に行った後、調べてみると山梨は県大会の日程は重なっているのだけれど、地区大会の日程は理想的にズレていることがわかり、絶対に観に行こうと決めていました。それが今日。

幸いウチの前には中央線の駅に出るバスが2路線走っているので、中央線へのアクセスは良い。今日は国分寺駅から中央線に乗り、立川駅で特急に乗り換え甲府駅、中央本線で塩崎駅へ。そこから徒歩3分ほどのところに会場である双葉ふれあい文化館が会場。

甲斐市双葉ふれあい文化館。

到着すると入口のところに中村先生が。今日はお目にかかれないかと思っていたので少し嬉しい。ということでご挨拶を少しだけ。発表前ですからお邪魔にならないようにすぐにホールへと入りました。ホールは結構な広さ、ウチの近辺でいえば2階の無いコピスみよしのような、だから多分500席ぐらい。こんなホールで地区をしている埼玉県の地区はないので相当豪華な感じがします。

今日の甲府南さんの上演は2本目で14時05分からの予定でしたが、心配性なので電車が遅れても間に合うようにと、開場時間12時40分を目指していったので、開場してすぐに客席にいる部外者という完全に浮いた存在(>_<。) 事情を知らない人からすればとんだ演劇おじさんと化していました。13時から開会式。審査員の紹介だけでしたが審査員も地区から豪華。山梨、恐るべし(゚Д゚) でも、上演は1本目から3本目までを観ました。

14時05分、甲府南の上演開始。今まで観た甲府南さんの作品は全て再演されたものでしたが、今日は長い旅の始まりになるかも知れない最初の公演。きっと会場が東京の劇場だったら客席ギュウギュウなのだろうけど、今日は勿体ない感じでした。中村先生がそうTweetしていた気持ちも分かるような気がします。

見終わった感想は揺るぎません。

『こんな本、書けんがなっ!(>_<)/』

まだ諦めてないのかと思われるかも知れませんが、諦めていません! いや、諦めません!!!

・・・ということで、細かな感想に進みますが、ここからは内容に触れるので内容を知りたくない方はここでストップ! ダメ、絶対!

・・・とはいえ、ストーリーにはあまり触れません。しかも、断片的にハッキリ表現せずに書き連ねます。どこかのタイミングでこの作品の上演を観たら、読み返してみてください。きっと、分かってもらえます。

良い芝居というのは幕開きに美しさがあります。雑然と広がる小道具、中心に座る少女、それが良く栄えるホリゾント、音楽。スーッと作品の中に引きこまれていくのが嬉しい。不思議なことに今まで観た会場よりも圧倒的に舞台が広いのに印象があまり変わらない。空間の埋め方が上手に計算されてるんだろうなぁと感じました。そうだ、この前のアフタートークで大きな会場も得意と仰っていた。なるほど、納得(+_+) 後で振りかえると、雑然と置かれた椅子や小道具たちはあれを具象化した表現なのかな、とか考えていて楽しい。とにかく印象的で美しい幕開け←ここ重要!

時刻を繰り返し確認する最初の場面。幕開きから1人だけカードを首にかけていたので違和感があったのですが、ここで記憶が題材になっているのが明らかになります。これが大切なところだと思うのですが、そういったことを語っても大袈裟にしない。このアプローチがいつも良いんだなぁと思います←これは後でもう少し詳しく・・・

演劇部の場面。個人的にかなりハマった。最近、卒業した部長たちに立て続け言われた『稽古もしてないセリフも覚えてない芝居の開演直前という夢を見る』という話が。これはやっぱり演劇部員に良くある現象なのだろうか。実は僕も今だにその夢を見るので『それ、ずっと見続けるよ』と答えたばかり。あれはかなりの恐怖←ただの感想(・ω・)

告白の場面。たぶん、場面的には僕が高校演劇で一番嫌いなパターンの場面なのだけれど、不思議と楽しめる。これは役者と演出の勝利。甲府南の男子部員は決してわざとらしい大芝居をしない。この芝居が全国で流行ったら男子はこの場面でやりたい放題になるだろうが、そうなったら多分、見られたものじゃ無くなると思う。声は良い響きがあるし、表情も仕草も所作も『どうだっ!』という感じがない。こうなると伝えたい内容がフッと浮かび上がってくる←これはなかなか観られない!(゚Д゚)

宇宙人の場面。繰り返しを少しずらしていくのが中村先生のパターンの1つなわけですが、そのズレ幅がポイントなのだろうけど本作は結構なジャンプ。でも、着地が綺麗。かつ、面白い。高校演劇の創作脚本でも面白い場面を作ろうとする人は多いけれど、意外と王道のパターンを外している人が多い。中村先生は別にコメディ作家でもないであろうに、確実にそこを抑えているのでたまらない。組み立てで作る面白さ←ここ重要(^_^)!

アイドルの場面。いつものように(と言って良いのか分かりませんが)盛り上がる場面ですが、その場面では小道具が集まってきて、持ちきれないところとかが切ないし、それがまた綺麗に片づけられるのも切ない。盛り上がる場面にそういうシーンがスッと差し込まれていると切なさが増す←ズルい!

バスの場面。何故だろう、泣いた。いや、なんかね、全く劇的じゃないし、むしろ淡々としているのだけれど、良いんです。追いかけてる友達、バスの運転手、主人公。日常の中にある思いやりや感謝が溢れ出す、なにげないやり取り。そこからのラスト。2つのエンディングの順番が良い。逆だったら興ざめだったかも。ラストシーンは勿論、重要。構図はもちろんだけれど、響く言葉の美しさも大切。

・・・と、ここまでは単なる感想。完全にただのファンだな、これは(‥;) ここから少し考えたこと。

発想の飛躍の距離。

この題材であれば苦悩する主人公になる可能性もあるし、周りの対応もどう接して良いのか分からないという可能性もある・・・というか、高校演劇の範疇ではそちらに流れる方が多いのではないかとも思います。困難を抱える人間の苦悩や周囲の人々の戸惑いや困惑など負の感情にスポットを当てる方が劇的になりやすいからです。もし、そんな話なら、いくら中村先生の作品といっても何の興味も持てなかったと思います。

でも、やっぱり違います。その現状を悲しみや苦しみ、戸惑いや哀れみから描くのではなく、喜びや楽しみ、包容力や思いやりから描く。同じ事柄を描くのであれば、そのアプローチの方が難しいと思うし、1つ間違うと、とんでもなく軽薄なものとなってしまうはずなのに、そちら側には落ちない。かと言って決して楽観的なわけでも無い。悩んでいる様子はしっかり描かれている(昨日の何があったかの話は結構ズーンと来ました)し、主人公が何を恐れているのかも伝わってくる。でも、その不安の描写で表現を飛躍させ、明るい場面に昇華させる。その飛躍が華麗なのだと思う。

そして、その飛躍が振り幅となって心が動くから、過剰に重厚な場面を作らなくともホロリとする。これでもか、これでもかと力業で劇的さを強調するものからは決して生まれることのない心地よく爽快な後味が残る。僕の好きな作家さんが言っていた『水平より5度ぐらい前向きに終わる』というのを地で行くような作風に魅力を感じているのだと改めて思いました。

この辺は解釈色々だろうと思いますが、例えば最後の場面で主人公があの言葉を発するのは自然な流れかも知れませんが、周囲の友人たちがその言葉を発するのも、こうした流れを象徴するような気がします。本当なら周囲の人々は、面倒くさかったり、鬱陶しかったりするかも知れません。でも、そちら側には落とさない。そういう困難があっても、いてくれることへの感謝。決して劇的ではないかもしれないけれど、その方が素敵な表現であることは揺るがないと思います。

そして、この表現を体現している役者さんたちもスゴイと思う。ずっと言い続けている科白のサラサラ感は言うに及ばす、軽やかな身のこなしと止まったときの立ち姿も絵になる。この本を台無しにする方法はいくらでもある・・・というか、そちらに落ち込む選択肢の方が圧倒的に多いはずなのに脚本をしっかり理解して、脚本を活かす表現を繰り広げている。もちろん、1人の作家の作風を最大限理解した集団であるという特性はあるのだろうけれど、『理解する』と『表現する』の間には渡りがたい河が横たわっているわけで、それを飛び越えるのは大変なことだと思います。

もちろん、これは作家と役者、双方からの歩み寄りによるものだと思います。今回の主人公となるナオコさんは『歩き続けてときどき止まる』の時にも、とても印象的にモノローグと科白を繰り出していました。今回、それがもっと印象的になっていました。モノローグだからといって力まず、優しい響きのある声と立ち姿に清々しい印象を受けました。

それに対して、アカネさんやミヅキさんは説得の力のある科白が魅力であり、そういった役回りをしっかりと果たしていますし、ユウト君を中心とする男子チームは決して狙わない。それは受け継いだものか、感じ取っているものか、理解しているものか、演出されたものかは分からないけれど、この作品をどう演じると作品の魅力が活かされ、結果、自分たちが活きることを十二分に理解しているように感じられます。

ともすれば、顧問の脚本が求める演技が部員と合わずに悲鳴が上がっている顧問創作が多いのに。これだけ個性的な脚本なのに見事に歯車が噛み合っているのは、インスピレーションが部員側にあるからなのだと感じます。だから、部員たちは自分たちの役割をきちんと果たせば面白くなることが理解できるのかもと。

う〜ん、長く書いた割りに結局、まとまらぬ(+_+) 今回はこの辺にしておこう(@_@)

これを書いているウチに審査の結果が分かり、甲府南さんが県大会に推薦されました!(^_^)!

・・・しかし、残念ながら、ウチの県の中央発表会と同日開催なので、県大会を観に行くことはかないません。でも、きっとまた観る機会はあるはず。1度では目が足りなくて、見逃していることがたくさんあるはずなので、またの機会にしっかり観たいと思います。


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