『A FEW GOOD MEN』淵上泰史・瀬奈じゅん★

テスト前になって暇な週末。何か芝居を観たいと思って、ネットオークションでチケットを物色。転売目的なのかプレミアのついた高いチケットもあるが、ホントに行けなくなったのか定価を割って出品されているチケットもある。そんな中に気になる作品が。

『A FEW GOOD MEN』

脚本家アーロン・ソーキンのデビュー作。舞台の作品として作られたが、初演の前には映画化が決まっていたという作品です。アーロン・ソーキンと云えば映画『ソーシャル・ネットワーク』や『マネーボール』で知られ、今年は『Steve Jobs』が公開される予定の人気脚本家。しかしながら、僕に取ってのアーロン・ソーキンの代表作は何と言ってもテレビドラマ『The West Wing(ザ・ホワイトハウス)』。大統領と補佐官たちの日常を描いたこのドラマのアーロンが担当していた最初の4シーズンはとんでもない仕上がりのドラマです。日本では不人気でしたが、アメリカでは4年連続エミー賞の作品賞に輝くなど華々しい受賞歴を誇っています。

閑話休題。その『A FEW GOOD MEN』の日本版舞台のチケットが出ていて、調べてみると瀬奈じゅんさんが出ている。これは観に行くべきだと決めて、チケットを落札。目指すは天王洲アイルの銀河劇場。都内の劇場で一番遠く感じる劇場なので、あまり行きたくはないんだけど、良い演目が結構かかるので、結局行くことになるのが多い劇場です。

さて、劇場に入るとプログラムを販売しています。別に良くある光景ですが、『開演前にプログラムをお読み頂くとより上演をお楽しみ頂けます』との声が。映画を観ていないので何とも言えないけれど、そんなに複雑なお話なのかと不安に。一応、プログラムを購入して、席へ。

今日の席は2階最前列。銀河劇場は大きな劇場ではないので2階席でも十分観やすい。プログラムを読もうかとも思ったけれど、初見の新鮮さを取ることにしました。でも、2階席は埋まっていませんでした。なかなか繰り返して観たいと思うような爽やかな話ではないんだろうなと思いつつ、開演を待ちます。

お話はキューバのアメリカ軍グアンタナモ海軍基地での事件を巡る裁判を中心に展開される法廷サスペンスです。淵上泰史さん演じるキャフィ中尉と瀬奈じゅんさん演じるギャロウェイ少佐が事件を起こした平埜生成さん演じるドーソン兵長が起こした事件の弁護をしながら、次第にその事件が田口トモロヲさん演じるグアンタナモ海軍基地司令官のジェセップ大佐の命令による私刑であったことを明らかにしていくものでした。

感想としては『裁判もの』の作品としてはとても充実した内容でした。弁護側の淵上さんと瀬奈さんが衝突しつつも事件の真相に迫ろうと苦悩する姿も、検察官を演じた小西遼生さんの鋭さも、アメリカ軍の現場司令官の歪んだ感情を表現した田口さんの演技も作品にグッと引き込まれる重みがありました。久しぶりにストレートプレイを観た気がしますが、社会性のあるドラマとして重厚で興味深いものでした。

でも、『アーロン・ソーキンの作品の舞台』としては、少し期待外れでした。正確に言うと、思っていたのとは違いました。アーロン・ソーキンの作品ならば、流れるような科白の応酬によってドラマが成立するのだろうと思っていましたし、その視点で見ると、シーンの分け目に盛大な音楽が流れ、暗転になるのもシーンが途切れ途切れになってしまう印象を受けました。たぶん、普通の裁判ものであれば何も気にならなかったのかもしれないのだけれど、『アーロン・ソーキンの作品の舞台』という先入観がそう思わせてしまったのかもしれません。

また、弁護士が法廷で証人を尋問をする場合にあんなに厳しい口調は使わないだろうと。アメリカの裁判ではとにかく陪審員がどう思うかに重きが置かれて裁判は進みます。もちろん、最後の問い詰めで大きな声を出すのは分からなくもないけれど、全体としては、ソフトな口調で相手を黙らせるような鋭さが必要なんだろうと理解しているので、この作品の証人尋問のやり取りはあまりに激しく違和感がありました。

そして、最大の『?』大佐の自白を誘う場面で、中尉が大佐の追い詰めた後、大佐が感情にまかせて反論を始めるまでの間でした。確か、

キャフィ『貴方がコードレッドの命令を出したんですね!』
裁判長『答える義務はありません、大佐!』
間。
キャフィ、自分の席に戻る。
間。
ジェセップ大佐、イスを持ち上げガタンと鳴らし、
ジェセップ『いいだろう、答えてやる』

こんなやり取りだったと思います。キャフィの動きを含めて沈黙が20秒ぐらいあったと思いますが、ここからジェセップ大佐は感情的に捲し立て、ついにはキャフィの誘導に引っかかって自分が命令したことを言ってしまうのですが、間を取って怒りがも沸き上がっていくという表現がとても日本的な演出に感じられてしまったのは僕だけだろうか。

ここは売り言葉に買い言葉で言い放ってしまって、語るに落ちていく展開が自然じゃなかろうか。20秒も黙っていられるのに、その間に冷静に戻れず、語るに落ちる人間が、前線司令官になれるだろうかというのが素朴な疑問として残った。もちろん、そうじゃない人間もいると思うけれど、アーロン・ソーキンがそういう描写をしたのだろうか。

・・・と気になってしまったので、終演後、りんかい線の天王洲アイル駅に向かうまでの間にAmazonで『A FEW GOOD MEN』のBlu-rayを注文。明日、早速観てみよう。

(この記事はいずれ2015年6月27日 @ 22:00に移動します)


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