コピスみよし『15周年に寄せて』(転載)

(この文章は第15回高校演劇フェスティバルのパンフレットに寄稿した『15周年に寄せて』の文章です。コピスみよしでの公演を前に、そのきっかけとなった『高校演劇フェスティバル』とのつながりの一端をご紹介代わりに転載しておこうと思います)

【上演を振り返り】

第4回、朝霞西高校で演劇部の顧問となった時に上演したのが『ホット・チョコレート』。第9回、新座柳瀬高校に異動した年に上演したのが『ホット・チョコレート』と、副顧問としてコピスを訪れると何故か同じ演目を上演するという少し面白い経験をした。

以降、朝霞西で4演目、新座柳瀬で6演目を上演してきた。つまり、今回の上演で個人的には10演目。振り返ると思い出されることは多い。また、演劇部の顧問になった時から、ずっとコピスみよしに参加し続けているため、『6月にコピスみよし高校演劇フェスティバルがない』演劇部の活動を知らない演劇部顧問。コピスでの上演を振りかえること=顧問としての成長記録とも言える。せっかくなので振りかえってみたい。

第5回『蝶になる家族』。緞帳が開いて芝居が始まって、どうも照明の感じがおかしいなと思っていて、しばらくして気づく。舞台の背景となる大黒が閉まっていない。照明のタイミングをはかって途中でコッソリと閉めてもらったのだが、この時から開演前に必ず背景を確認する習慣ついた。

第6回『じゅげむ』、第7回『Midair Knight’s Dream』。実は両方とも元を正せば宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をベースとした物語だった。この時はお客さまのアンケートに驚かされた。このフェスティバルは高校演劇のイベントとしては圧倒的に一般のお客さまが多いのだが、そのお客さまのアンケートから『物語は違うけど、今年もニコちゃんに会えて嬉しかった』という記述がありました。『じゅげむ』も『Midair Knight’s Dream』も主人公の名前が【ニコ】で同じ生徒が演じていたのだが、それを憶えてくださっていた。毎年、楽しみにしてくださっている一般のお客さまがいるのだと強く感じ、しっかりとした上演を続けねばと気を引き締めた。

第8回『ピンポン探偵と山椒魚』では初めて舞台後方に高台の通路を組み、パンチカーペットを敷いて、複数の空間を表現することを試した。平台や高足などを自由に使えるコピスだからこそ試すことができたことで、これは新座柳瀬に移ってから多くの芝居で利用している手法となっていく。

第10回『Snow White?  Bloody Red!』の上演を観てくれた南部地区の某高校さんがこの作品を気に入ってくれて、翌年の関東高校演劇サマーフェスティバルで演目に選んでくれた。作・演出の形を取っている自分の脚本が他の人の手によって上演されるという貴重な体験のきっかけを作ってくれたのもコピスみよしだった。

第11回『To Explosion』では再び宮沢賢治に取り組んだ。火山の噴火を表現するために、背景パネルを布張りにして、赤い照明で染め抜くという手法を取ったのだが、照明の加減によって、パネル裏の人物が見えてしまった。この時は照明を微調整して頂きながら、見え方を調整してもらい、ある意味は紗幕の使い方を実践的に学習させていただいた。

第12回『D Lover』。以前から地区で上演した演目をもう一度観に来て頂くのは申し訳ないと思っていた。そこで地区とコピスで連作となる作品を用意した。続きが気になれば観に来る楽しみなるかと思ったからだ。しかし、当然のことながら、コピスで初めて見る方々にも楽しんでもらわなければならない。そこで紗幕に映像を流して、前編のあらすじを伝えることにして、初めてプロジェクターを使用させて頂いた。連作については、この年はさすがに連作感が強すぎたことを反省するに至った。

第13回『Eliza!』では前年の反省を受けて、前編と後編で続きの話だが、後編だけで物語が完結するように組み立てた。この年は楽器の演奏と歌唱を試した。音楽ホールとしても定評のあるコピスで楽器の音を鳴らしてみたいという念願がようやく叶った。

第14回『Ernest!』ではコピスご自慢のスタインウェイのピアノをお借りした。恐らく高校演劇史上、希に見る高額の道具である。コンサートやレコーディングに使用するピアノを演劇に貸してくださる懐の深さに感謝しつつ、コピスのピアノをお客さまに披露できたのは嬉しいことだった。

そして、迎える第15回『Angel in Broadway!』。このフェスティバルでコピスみよしという会場の可能性を追求しながら、演目の幅を広げるのが私の役割だと(勝手に)思っている。きっと、まだまだ出来ることがあるはず。これからも続いていくフェスティバルの中でより楽しんで頂ける作品作りを目指していきたい。

【運営を振りかえり】

第6回から実行委員会副委員長を担当し、第10回からは桜井先生の後を受けて事務局を担当するようになった。しかし、生来の人見知りのため、交渉や調整という仕事は向いていない。それでも自分の中にある社交性を精一杯、かき集めて取り組むのは、このフェスティバルを続けて行かなければという使命感からだ。

このフェスティバルを継続していくためには、私たちが支えてくださる三芳町の方々やコピスみよしの方々よりも高い熱量を持っている必要があるのだろうと思っている。しかし、これは容易なことではない。三芳町の方々はこのフェスティバルの発展ために全力を挙げてくださっているからだ。その想いに対して、私たちは全力で応えなければならないと思う。そのためにあらゆる選択肢を検討し、より魅力的なフェスティバルになるように進化し続けるイベントにしなければならない。上演校数の増や階段パフォーマンスの導入、今年は東京都の高校を招いた。運営の方法も少しずつではあるが改善を目指している。とにかく前進あるのみ。

このフェスティバルの特徴は何より一般のお客さま多さだと思う。通常の高校演劇の発表会の客層は部員である生徒の友人や保護者、学校関係者、他校の演劇部の部員などの関係者が中心である。しかし、コピスには普段は高校演劇など見ていないお客さまが存在する。これは大変ありがたいと同時に貴重な機会である。アンケートを呼んでいると非常に達筆な回答がある。普段のアンケートでは頂けないような、ハッとするご意見がたくさんある。こういった方々を大切にしなければならないと思うと同時に、こういった方々に飽きられてしまったら、このフェスティバルは続かないのだろうと気持ちを新たにする。

演劇人の基本精神に『Show must go on』というものがある。「一度始まった芝居の幕は途中で下ろしてはいけない、何があっても芝居を続けなければならない」という意味だ。このフェスティバルは今年、第15回を迎え、通算82作品が上演されてきた。1作品ごとに幕が上がり、幕が下りる。これを82回、繰り返してきた。今年も新座柳瀬の公演で第15回目のフェスティバル幕が下りる。

しかし、『コピスみよし高校演劇フェスティバル』というフェスティバルの幕は決して降ろしてはならない。


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